東京反核医師の会 緊急声明

福島第一原発事故の災害規模予測(ハザードマップ)の告知を求める緊急声明


 私たちは、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)の活動に参加し、核兵器廃絶を目指す医師団です。これまで一貫して、広島、長崎原爆被爆者の医学的支援に携わってきました。私たちは、放射性物質被曝の苦しい体験に接してきたが故に、この日本で、またもや被曝災害が起きることを絶対に許せません。

 現在、すべての国民が、事態の深刻さを懸念し、一刻も早い福島第一原発事故の収束を願っています。ところが、政府および関係機関は、「依然として予断を許さない事態」と繰り返し、「収束に全力を尽くす」と発表する以外、災害予測の詳細な情報を国民に示していません。伝えられているのは、日々の対策だけです。「予断を許さない事態」とは何なのか、まったく教えられていません。この状況で、「収束への最善の努力」が失敗すれば、結果は悲惨であります。再び「寝耳に水」状態で災害に見舞われます。

 危機にある福島第一原発の原子炉には、少なくとも、ヒロシマ型原子爆弾数百発分の核分裂物質があります。そのうえ、3号機には、ウランのおよそ10分の1のプルトニウムを含むMOX燃料があります。通常のウラン燃料使用中に発生するプルトニウム濃度は0.02パーセントですが、それとは比較にならない量です。万が一、このプルトニウムの大量放出が起きるなら、それは人類が経験したことのない大災害となります。

 再臨界は防止されているとのことですが、深刻な事態が知らされています。原子炉内部で溶融が起きていること、格納容器に損傷が起きていること、電気的冷却機構の回復作業が困難を極めていること、などです。原子力安全委員会は、3月30日、「1〜3号機の原子炉圧力容器や格納容器が損傷を受けている」との見方を示しました。

 このような状況での最悪の事態とは、いずれかの原子炉の圧力容器、格納容器が大きく破損し、圧力容器内の水位が低下し、燃料棒が空気中に露出し、過熱する結果、さらなる燃料棒破壊が進行し、水素爆発または水蒸気爆発が起きることです。その場合、放射性物質空中放出の最悪の規模はどのようなものでありましょう。首都圏が汚染される危険性はどの程度でしょう。

 このような危惧が客観的に存在する以上、政府は、正確に、詳細に、その危険性を国民に告知するべきです。ハザードマップの概念とは、危険の程度を事前に住民に知らせることによって、災害が起きても、被害を最小限に抑える思想です。政府は、その立場を放棄しています。

 格納容器爆発の危険が皆無なら、その根拠を正確に、詳細に説明し、それを政府が保証するべきであります。そうすれば、たとえ放射能環境汚染が継続しても、国民は最悪事態の懸念からは解放され、「収束への最善の努力」の成功を期待することになるでしょう。

 それが不可能なら、政府は、予測される最悪の事態を早急に国民に告知し、事前の心構え、対策の基本を指示すべきであります。その際、絶対に必要なことがあります。

 それは、最悪の事態に際し、妊産婦、幼児と児童およびその母親、男女青少年の避難を最優先にする原則を、あらかじめ社会的に確立しておくことです。これは、危機的状況での社会的混乱を防止し、次世代の安全を守るのに決定的に重要です。仮に人類が経験する最悪の事故災害に直面することがあっても、次世代日本人の核分裂物質被曝だけは、何としても回避すべきです。全国民は、その心構えだけは確立しておくべきです。

 政府はもとより、各自治体、警察、自衛隊、メディア、そしてすべての市民が、われわれの願いに共鳴し、ただちに対策を立ててくださることを要請します。

2011年4月5日


核兵器廃絶・核戦争阻止 東京医師・歯科医師・医学者の会 (東京反核医師の会)

代表委員


向山  新
渡辺 吉明
片倉 和彦



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