トリチ今ムは水素の放射性同位体で、軍事用としては水爆の材料に使われている。崩壊で量が半分になる半減期は約12年。毎年約5%ずつ減っていく計算になり、補充しないと核兵器の性能が落ちてしまう。
生産に使われるのは、テネシー渓谷開発公社(TVA)が所有するワッツバー原発とセコヤー原発。いずれも加圧水型で120万キロワット級。原子炉の中で発生する中性子をリチウムに当ててトリチウムを作る。
米国は冷戦の終結で1988年以来軍事用トリチウムの生産を停止、国内の生産施設も閉鎖した。エネルギー省は核兵器保管計画の一環として、トリチウム生産用に新たに加速器を建設するなどの計画も検討してきたが、原発を使う方が安くつくとの結論に達した。政府所有の原発でもあり、保有する核兵器を維持するという安全保障上の目的なら問題はないと考えた。
米下院議会は今年初め、核不拡散上の理由から、民生用原子炉での軍事用トリチウムの生産を禁止する法案を承認したが、上院と両院協議会で否認された。下院の法案支持者らは現在も、原子力利用の軍民の分離原則に反すると批判を続けている。