ミドル・パワーズ・イニシアティブ:非武装化推進のための新しい提案
 

IPPNWは核兵器保有5カ国に対し、核兵器廃絶へ向けて多重二国間交渉を開始するよう圧力をかける新しいプロジェクトに参加することになった。

ミドル・パワーズ・イニシアティブ(Middle Powers Initiative−MPI)が公表した要約は、核兵器保有国のリーダーたが核廃絶に踏み出すよう、鍵を握る有力な非核兵器保有国に努力させるキャンペーン(IPPNWも参加している)にとって、有意義な資料である。

ミドル・パワーズ・イニシアティブ(MPI)は、NGOの国際ネットワークを構築する。このネットワークは、米国、ロシア、英国、フランス、中国、各核兵器保有国に対し、核兵器警戒態勢の解除と先制不使用宣言から始めて、核兵器廃絶交渉開始に向けて明確な意思表示をするよう圧力をかけることを、有力な多くのミドル・パワー国家の政府に要求する。

MPIは核兵器廃絶カナダ・ネットワークによって始められた。4月17日から5月8日までジュネーブで開かれる第二回核拡散防止条約準備会議の期間に設置される運営委員会が、プロジェクトの行方を見守ることになる。79の国々の971のNGOが参加している国際組織のABOLITION2000が、核兵器廃絶交渉を2000年までに実現させようと呼びかけている運動とは別個であるが、同じ枠組みで活動する。

冷戦終結後10年経過したにもかかわらず、30,000発の核兵器が世界に存在するからこそMPIが開始されなければならなかった。新しい核兵器交渉は実現しておらず、国際軍縮会議は麻痺している。北大西洋条約機構(NATO)の拡大を恐れたロシア国会は、START II(第2次戦略兵器制限条約)の批准を拒んでいるし、START IIIは凍結されたままである。通常戦力の崩壊を懸念するロシアの政治家、軍人たちは、ロシア防衛の生命線は核兵器であると、再び言い出した。START IIが批准されたとしても、2007年には少なくとも17,000発の核兵器が存在することになる。新しい流れによる圧力が明らかに必要である。

核不拡散条約(NPT)の無期限延長および包括的核実験禁止条約(CTBT)の調印にもかかわらず、より先端的で殺傷力のある核兵器を求めて新たな技術開発競争が始まっている。ブレティン・オブ・アトミック・サイエンティスト誌の編集委員、ウィリアム・アーキンは次のように述べた。「誓約とはまったく裏腹に、米国ではさまざまな核兵器の開発が進行している。」天然資源防衛委員会も次の声明を発した。「米国政府は、CTBTのもとで、新しいタイプの先端的な核兵器開発を遂行する能力の維持、実際にはその向上を目指しているのは明らかである。」

備蓄核兵器安全確保・管理プログラムと銘打って、米国は核兵器の性能と信頼性を向上させる未臨界核実験を開始した。新たな核兵器計画は次のような内容である:超低効力を可能にするB61−11地中貫通爆弾の配備、現在のトライデント潜水艦発射核弾頭の更新、トライデントミサイル自身の更新、新型潜水艦の開発、一国の電子工学システムを壊滅する強力電波用核弾頭の研究、生物兵器、化学兵器防護焼却を意図する短距離ミサイル用の核弾頭。

核兵器研究プログラムは、冷戦後に一時削減されたがその後劇的に膨張した米国年間軍事予算のによってまかなわれており、33パーセント増加、13年間で600億ドル(約70兆円)に達すると思われる。この動きは、非核保有国の化学・生物兵器攻撃に報復して核兵器を使用する可能性を米大統領が改めて宣言するにおよんで、一層不気味さを増している。

米国が改良された核兵器および将来の宇宙戦争にそなえた兵器の生産を続ければ、この競争に技術的に太刀打ちできる国は事実上ありえない。世界は"冷却した平和"環境下の21世紀の入り口で立ちすくんでいる。CTBTはいくつかの国が期待を裏切って批准しないままであろう。NPTは綻び始めるであろう。NPTのもとでその義務を無視する核兵器保有国に憤慨する非核兵器保有国の数(たとえばメキシコ、マレーシア、エジプ)が増すにちがいない。このことは、核兵器の拡散を防止する国際間協力を妨げる結果となる。

核兵器は自国と同盟国の安全に必須であると主張し、同時に他国の同じ主張を否定する、安全保障理事会常任理事5カ国による永続的核兵器保有こそが、不安定状態の根本要因である。これが、国際司法裁判所(ICJ)が全員一致で、有効な核兵器交渉を要求したポイントなのだが、西側の核兵器保有国およびほとんどのNATO諸国はこれを拒否しつづけている。

完全な核非武装化に向かう交渉過程であると明確に位置付けたいくつかの中間段階(すなわち、備蓄の削減、先制不使用合意、核分裂物質生産中止)について、多重二国間交渉の開始を、MPIは目指す。この枠組みがあれば、ミドル・パワーのリーダーたちが、米国、英国、フランス、ロシアの恫喝を危惧せずに、核兵器国際会議(国連文書、A/C.1/52/7)を目指す論議に参加しやすくなる。これら核兵器保有国のリーダーたちが近い将来に、国際核兵器会議を開催することに合意するとは思われない。しかし、会議が取り上げるべきさまざまな問題、核兵器撤去の承認およびその検証などについては、前向きに取り組む可能性がある。

MPIは、核兵器の人間性にたいする脅威という問題を焦点にして展開されなければならない。人間性こそがわれわれの共通の絆である。人々は地雷の被害を憂慮した。この問題は人類の課題としてとらえられた。ダイアナ皇太子妃の名声のおかげもあって、メディアが人々の憂慮を増幅した。地雷により一年に26,000人の死傷者がでるということが、生身の人間の恐怖として捉えられた。まして、一発の核兵器により数分間で数百万人が死亡することが、憂慮されないはずはない。人々はこのメガ殺戮を憂慮していないわけではない。ただ、人々は広島と長崎の惨状を忘却し、核兵器が生身の生命に加えた苛烈な感覚とは無縁に、抽象的にしか語れなくなっているのである。

MPIがなさねばならぬ必要不可欠な任務は、核兵器による恐怖を、殺戮と破壊を、非人道的で計り知れない後遺症を、きちんと記録することである。核兵器はまさにそのあるがままの姿で、すなわち大量殺戮兵器として、認識されていなければならない。核兵器は人道法のあらゆる教理と道理を侵害している。核兵器はいかなる意味でも合理化されえない。国際法廷前裁判長が述べたように、"核兵器は究極の悪"である。核兵器は非難されるべきであり、廃絶されなければならない。核兵器の存続体制を打ち破るための挑戦は道徳的にも、法的にも、政治的にも最優先の課題である。

ダグラス・ロッシュ 前カナダ軍縮大使、核兵器廃絶カナダネットワーク議長
(邦訳文責 渡植貞一郎)


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