原爆投下の被害の予測作業を手がけているのは、米国・プリンストン大学のパキスタン人物理学者やカラチにある労働教育調査研究所の研究員ら。印パ国境に近いラホールの中心地に広島型級(TNT火薬換算15キロトン)の原爆が投下された場合を想定し、爆心からの距離に分けてシミュレーションした。
それによると、@爆心地から半径1キロ以内は爆風、熱線、放射線で全員即死。建物はパンジャブ州議会議事堂、総合病院などすべて破壊される。A半径1−2キロでは、外出中の全員と建物内の半数の人が死亡。パンジャプ大学、ラホール博物館などほとんどが破壊される。B半径2−4キロ以内では5%の人が死亡、45%がけがをする。
主要な病院や役所、市場は炎上し、けが人の多くは適切な医療が受けられない。数年以上にわたって様々ながんに苦しむ人が多く出てくる。
研究者らは「被爆後は救急車や消防車もほとんど破壊され、残った緊急車両も道路の寸断で使えない」と指摘している。
被害状況は、「もし、このラホールに原爆が落ちたら」と題するパンフレットで紹介。核兵器を「大きな爆弾」程度にしか認識していない同国の多数の市民にとっては極めて「衝撃的内容」だという。地元紙も取り上げ、「われわれはこのような核で死ぬのだろうか」と論評している。
研究者らは同様のシミュレーションをカラチでも実施、イスラマバードなどでも準備している。
一方、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)のインド支部を代表するシュリワスタ博士らも、インドがラホールに原爆を投下した場合の自国への影響や、パキスタンがインドの首都二ューデリーに広島型原爆を投下した場合の被害状況を予測。「主要な病院が集中している半径5キロ以内は、病院施設はもちろん病院スタッフもすべてやられ、首都の医療機能は壊滅する」としている。
同博士は[ラホールからインド国境までわずかに30キロ。しかもそこはインド有数の穀倉地帯、パンジャブ地方だ。風向き次第で、穀物はすすべて放射能で汚染される。隣同士の国で、核兵器は持っても使えない武器であることを、きちんとした資料をつけて両国政府に訴えたい」と話している。