核なき世界へ」安保理が決議採択 首脳会合、全会一致(朝日新聞2009年9月25日)
【ニューヨーク=松下佳世、藤田直央】「核不拡散と核軍縮」をテーマに、オバマ米大統領が主宰する国連安全保障理事会の首脳会合が24日午前(日本時間同日夜)、ニューヨークの国連本部で開かれた。核不拡散条約(NPT)で核兵器の保有が認められている米ロ英仏中5カ国すべての指導者が、安保理議長国の米国が提起した「核兵器のない世界」を目指す歴史的な決議を全会一致で採択した。
国連の64年にわたる歴史の中で「核」に絞った安保理首脳会合は、初めて。安保理が決議で「核なき世界」の実現を国際社会に呼びかけたのも、初めてのことだ。国際社会が一丸になって核廃絶に向けた不退転の決意を誓った。
決議には爆発を伴う核実験の自制や、NPTの重要性の確認と加盟の促進、北朝鮮とイランに科された過去の制裁決議の再確認が盛り込まれた。米中両国がまだ批准していない包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名・批准促進による早期発効も公約。来年5月のNPT再検討会議での論議の前進を促した。
だが、今回の決議に強制力はなく、加盟国の具体的な責任も明記されていないため、安保理の呼びかけに各国がどう呼応するかが注目される。
議長を務めたオバマ大統領は「この歴史的な決議は、核兵器のない世界という目的に向かって、我々が共有する公約を記したものだ」と宣言。一方、「核の危機を減らすための行動に向けた幅広い枠組みについての合意でもある」とも述べ、間近に迫った脅威である北朝鮮とイランの核開発に国際的な包囲網を構築する必要性を改めて強調した。
中国の胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席も演説。すべての核兵器保有国に核抑止政策の放棄と、先制核攻撃の禁止を訴えるとともに、核の平和利用の権利の尊重を改めて主張した。
安保理非常任理事国の日本の鳩山由紀夫首相は「核なき世界」を提唱したオバマ大統領のプラハ演説を「世界中の人々を勇気づけた」と評価。「核を持たない強い意志」を示すため「非核三原則の堅持を改めて誓う」と述べた。核保有については、自民党政権当時に閣僚や党幹部が言及することがあったが、鳩山政権として一線を画す姿勢を明確にした。
また、日本の非核政策を「唯一の被爆国として果たすべき道義的責任」と説明し、「日本は核廃絶に向けて先頭に立たなければならない」と決意を表明。「世界の指導者はぜひ広島、長崎を訪れ、核兵器の悲惨さを心に刻んで頂ければと思う」と訴えた。
核不拡散・核軍縮に関する国連安保理首脳会合の決議の要旨
〈前文〉
安全保障理事会は、核不拡散条約(NPT)の目標に沿って、核兵器のない世界に向けた条件を構築することを決議する。
すべての加盟国に軍縮に関する義務の履行や大量破壊兵器の拡散防止を求めた、92年1月31日の国連安保理首脳会議での声明を再確認する。
大量破壊兵器の拡散や運搬は国際的な平和や安全保障を脅かすことを再確認する。
NPTは核不拡散体制の礎で、核軍縮の追求や核の平和利用に不可欠な基礎だと強調する。
核兵器国による核軍縮の努力を歓迎する。
米ロの第1次戦略兵器削減条約(START1)後継に向けた交渉決定を歓迎する。
非核兵器地帯条約の締結に向けた取り組みを支持する。
09年の1874決議(対北朝鮮制裁決議)や08年の決議1803(対イラン追加制裁決議)を再確認する。
核テロの脅威に深刻な懸念を表明し、テロリストを利する核物質・技術支援を防ぐ効果的な措置をすべての国が取る必要性を認識する。
来年の核安全保障サミットの開催を支持する。
〈本文〉
核不拡散の義務を順守しない状況は安保理で問われることとなり、国際的な平和や安全保障への脅威となるか見極めることを強調する。
NPT締約国に、NPTに基づき義務を全うすることを求め、NPT非加盟国には、非核兵器国としてNPTに加盟するよう求める。
来年のNPT再検討会議がNPTを強化するものとなり、核不拡散・核の平和利用・核軍縮というNPTの三つの柱に現実的かつ達成可能な目標を設定できるよう、NPT加盟国に協力を求める。
すべての国に対し、核爆発実験をせず、包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名、批准するよう求める。
兵器用核分裂性物質生産禁止条約(カットオフ条約)の早期交渉入りを求める。
核燃料サイクルへの多国間の取り組みに関する国際原子力機関(IAEA)の作業を奨励する。
IAEA追加議定書への署名や批准、履行をすべての国に求める。
NPTを脱退した国は、脱退以前のNPT違反について責任を負うことを確認する。