分岐器の用語の説明

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問:日本の分岐器の用語はどのようなものですか

答:_日本の分岐器の用語は、鉄道の黎明期英国から導入された技術の和訳から始まって、戦後に米国の技術も導入され、主として英語の和訳を用いてきました。しかし、分岐器の技術そのものはフランス、ドイツが進んでいたことから、早くから欧州の文献の調査が行われ、「分岐器用用特殊レール」、基本レールの削り等欧州の技術の導入も図られて来ました。英国の技術については、英国の保守性から双頭レールが用いられていたようなことがあり、当初技術を輸入した英国よりは、むしろアメリカ、フランス、ドイツの技術に目をむけていました。
_このページでは線路用語の中の分岐器の関係用語について、分かり易く解説したものです。

問:日本の分岐器の特徴はどのようなものですか

答:__鉄道開業時代の明治時代の分岐器は、英国輸入の分岐器を使用していました。その後米国から輸入されたAREA規格の分岐器もフィート・ポンド法による分岐器の寸法をミリメートル単位に読み替えた分岐器が使用され、この分岐器を旧形定規分岐器と呼んでおり、明治39年式、41年式等30kgレールの分岐器がありました。
_さらに古い分岐器は現在湖東線の長浜駅構内にある鉄道記念物のポイントで、基本レールに穴をあけて「トングレールの転轍棒」を通す仕組みが現代と異なります。その後日本の鉄道で明治時代に普及した「分岐器の特徴」は、トングレールの後端継ぎ目がピボットであること、クロッシングの大床板の形状が後の大床板の形状と比較して少し小さい等の違いなどです。
__その後、輸入されていた車両、レール等の国産化が進み、大正年間に分岐器にについても国産化が行われ、時の鉄道省「大臣官房研究所」でこの時代の分岐器は設計されており、大正14年形分岐器と呼んでいます。一般的には30、37用については定規分岐器といい、50PS用準定規分岐器といいました。大正14年形分岐器は戦前の日本の代表的な分岐器でした。

_戦後の復興期が過ぎ、鉄道の輸送が増え、日本独自のレールの制定が昭和30年代に実施されると共に、新幹線用分岐器の設計が行われ、「在来線分岐器」もそれまで使用されて来た分岐器の改良と新設計が実施され、Nレール用分岐器として統一されました。
_その後、ISOのねじの使用による改訂Nレール用分岐器(ISOねじ使用))60レールの制定に伴う改訂 、(60レール用分岐器) を経て、現在鉄道事業者各社の分岐器の基本が出来上がっています。

問:日本の分岐器用レールはどのようなものですか

答:_戦前の「日本のレール」は、米国の技術により、30、37レールASCE、50レールPSレールが用いられて来ました。ASCEは、(American Standard of Civil Engineering)で米国土木学会標準規格、PSは (Pennsilvania railroad Standard) でペンシルバニア鉄道標準規格です。
_その後昭和30年代日本独自の性能のレールを制定することとなり、現在のNレールが制定されました。この新レールを「Nレール」と呼びました。
_新幹線の開通した当初使用されたレールは、50T(Trank_line;Tokaido)レールと呼ばれるレールで、新幹線仕様のレールでした。しかし、新幹線の輸送が増えてレールの寿命が短くなり、そのため更に断面定数の大きい丈夫な60レールが設計されて使用されました。レールに使用されている数字は、単位長さ当たりの重量を指します。

_日本の製品は最近は何であっても世界的に性能の良い製品が出回っていますが、「日本のレール」も御多聞にもれず世界的に見て性能の良いレールであります。特に高炭素含有量や、合金鋼微細パーライト構造の組織を持つレールは、世界的にみて最高の性能を持っているようです。従って、米国にも毎年大量のレールが輸出されています。また日本で開発された60レールは、その断面のうち顎下の半径の大きい断面形状は世界的にも評価の高いレールと考えています。欧州のレール専門家の評価もその点を評価をしていることを聞いています。

_分岐器のトングレールは工作機械で切削加工して製作しますが、設計上尖端トングレールの足底部と頭部断面は基本レールと接着させるために断面が薄くなり、特に高速の出る衝撃の大きい分岐器では損傷が心配になります。そのような場合、特に戦前のドイツでは、レール底部やレール顎部に特に薄い断面が出来ることに対する対策としてトングレールの切削加工後も適当な断面を維持できるような、分岐器用の特殊断面のレールを使って来ました。また重要な分岐器のガードレールについても、同様の見地から衝撃の恐れのあるガードレールに用いる特殊なレールを使ってきました。
_日本では大正15年にドイツのクルップ社からポイントを輸入した結果が非常に良かったのでしたが高価であったため国産化を考え、レールの圧延途中の断面を用いた帽子形レールによるトングレールを製作しました。圧延中途のレールを用いることは圧延断面比の点で問題になりましたが、性能は問題ありませんでした。現在の連続鋳造法も、この性能評価も考慮して決められています。このレールはトングレール用として特に設計されたものではありませんでしたが、戦中および戦後復興期の分岐器強化に効果を上げ、マンガンクロッシングと併用して、帽子形ポイントマンガンクロッシング使用分岐器(「帽マン分岐器」)として輸送量の多い線区の最強型分岐器として使用されました。

_現在分岐器用の特殊レールは、40N分岐器用の50Sレール、50N分岐器用の「70Sレール」、60分岐器、新幹線用分岐器の80Sレール90Sレールがあります。
_このうち、50S,70SレールはNレール制定当初に制定された特殊レールですが、90Sレール溶接クロッシング用合金鋼レールに用いられて溶接用の断面をした特殊レールでしたが、使用量が少ないためにその断面の強度を活かして「トングレール」EJにも使用されていました。しかし、現在は断面の経済性を考慮して溶接用の部分を取った80Sレールトングレール用として使用されています。

問:ポイントとは何でしょうか

答:_ポイントと言うのは、分岐器の一部で「トングレール」を含む分岐器を転轍する部分:転轍器、を指しています。JISには信号関係の用語で「転轍」というのがありますが、その場合には信号用品である「転轍棒」や、スイッチアジャスターも含んでいるので、土木の用語でポイントと言った場合には、分岐器を構成する部材のうち、信号用品を除く転轍器の部分になります。

_新橋―横浜間に日本で最初に鉄道が敷設された時、ポインツという用語で材料を調達した記録と、ポインツで事故を起こした記事があるようですから、当時の用語では一般的にポインツというのは分岐器をさしていたものとも思われます。
_京都の先斗(ポント)町は、測量原点のポイントから来たとのことですが、分岐器も日本に入って来たものは尖端転轍器(尖端トングレールによるポイント):尖端ポイントからポイントとなったと思われます。これに対してレールを直角に切った「トングレール」を使用するポイントを鈍端転轍器と言い:鈍端ポイントと言います。「鈍端ポイント」はポイント先端の遊間の調整が難しく一般的には使用されていません。

_ポイントとつく用語を旧用語で調べますと、ポイント:転轍器、鈍端ポイント:鈍端転轍器、乗越ポイント:乗越転轍器、ただし、遷移転轍器:乗越分岐器、で集合は一致していないようです。また、ポイントガード:護輪装置、ポイントリバー:錘附転換器、でこれは参考になりません。
_なお、電気の用語では電気転轍器をモーターポイントといい、ポイントリバーを錘附転換器といっています。これらの総称は転轍器転換装置です。なお英語ではポイントを示すスイッチと言う用語があります。転てつ棒をモーターポイントに取り付ける部分がスイッチアジャスターです。

_ポイントは転換することにより線路上の列車を他の線路に分岐させているので、転換されるレールの後端にヒンジの部分が出来ます。この部分が固定されてトングレールの弾性曲げで転換するものを「弾性ポイント」といい、ヒンジの部分がピボットのように回転する構造のポイントを「関節ポイント」、継ぎ目板の中でレールが遊びを持って滑る構造により転換するものを滑節ポイントと呼んでいます。滑節構造のポイントはポイント後端の継ぎ目のガタがあり、関節構造のポイントの方がしっかりしています。ポイントの弱点はトングレールを固定出来ないことによるガタによる衝撃の発生で、ポイント後端部の床板等の損傷が発生しやすく厳重な保守管理が行われています。その点、「弾性ポイント」は端部が固定されており、衝撃の少ない点が有利ですが、ポイントの長さが長くなって高価になります。

問:クロッシングとは何でしょうか

答:_クロッシングはレールを渡る部分のことで、英語の広い意味には踏切の意味も入っています。従って、米語のクロッシングはフロッグという用語があります。フロッグは日本語では「蛙」で、米語のフロッグには尻尾のついたトカゲのようなフロッグもいるようですから、どんなクロッシングが蛙なのかは良く分かりません。米国には<../kouzo01/ikouzo01.html#mangan>マンガンクロッシングが多く、その断面は確かに蛙が両手をついているように見えないこともありませんので、それから来たと言われたことがあります。定かではありません。
_クロッシンクの旧用語は轍叉です。ただし「ダイアモンドクロッシング」は菱形交叉といいます。さらに亘線附交叉は、スリップスイッチです。なおシーサスクロッシングは交叉亘線でマンガンクロッシングはマンガン鋼製轍叉です。

_クロッシングには、固定クロッシングと可動クロッシングがあります。可動クロッシングにはノーズ可動クロッシングとウイング可動クロッシングがあり、「ノーズ可動クロッシング」には新幹線型のノーズ可動クロッシングと、鈍端型のノーズ可動クロッシングがあります。鈍端型のノーズ可動クロッシングは戦前の日本の開発で有名なクロッシングですが、遊間の調整が難しいのと、鈍端レールの損傷による脱線の危険が高く、戦後進駐軍の列車が鈍端可動クロッシングの事故により脱線したのを機会に、軍から「マンガンクロッシング」を使用するよう指導を受け、ハッドフィールド鋼と言われた高マンガン鋼の鋳造による現在の固定型のマンガンクロッシングが用いられるようになりました。なお、新幹線のノーズ可動クロッシングはマンガン鋼の鋳造で製造されています。

  • マンガン鋼はオーステナイト組織でガラスのような固溶体ですから、パーライト組織のレールとの溶接は難しく、溶接が必要な場合にはレールとの間に双方を熔着する材料を挟んで溶接する技術があります。この他レール鋼の溶接による溶接クロッシングがありドイツで発達して来ました。これに対してフランスはマンガンクロッシングが多用されています。レール鋼は炭素の含有量が0.7−0.9%なので溶接が難しく、損傷が起きやすいために合金鋼を用いた溶接クロッシングもあります。最近は普通レール鋼をガス圧接による溶接で製造したノーズ部にウイングレール部を接着材で接着した圧接クロッシングが開発され、固定クロッシングと前後のレールとの溶接に多用されています。

    _レール鋼でノーズレールとウイングレールを加工してボルトで組み立てたクロッシングを組立クロッシングと言います。昔は組立クロッシングの下に鋼製の大床板をリベットで取り付けたクロッシングを使用していました。大床板はクロッシングの衝撃を枕木多数で受ける構造ですが、列車の衝撃で大床板とリベットの加工部で損傷が生じたりして補修が必要であり、マンガンクロッシングの普及に伴い、大床板の不要な通過トン数の少ない線区に組立クロッシングが使用されています。

    _この他、クロッシングの製造方法としては、鍛造によるもの、マンガン鋼の芯にレールを巻いたハードセンターと呼ばれるものがあります。ハードセンターは米国で好んで使用されていますが、低速では良いものの乗り移りが悪くなる傾向があり北東回廊の分岐器の大きな動揺の一つの原因でもあるようです。溶接クロッシングはレール鋼の溶接性能が悪いために摩耗・損傷に対する配慮が必要であり、溶接線での乗り移り部の配慮が必要です。クロッシングの自動溶接方法として最も進んだ電子ビームによる溶接も実用化されていますが、クロッシングの溶接部の強度を上げるためには、今後もあらゆる方法による改良が必要と思われます。

  • 問:ガードとは何でしょうか

    答:_ガードというのは車輪を防護する装置で、他に脱線防止ガード、ポイントガードがありますが、分岐器の用語では主としてクロッシングの軌間線欠線部で車輪が異線進入するのを防止するために設置される装置で、ガードレールと、ガードレールのバックゲージを保持するための装置、ガードレールを締結するための装置の総称を言っています。

    _日本ではガードレールは原則的に分岐器を構成するレールと同種レールを切削加工して製造しますが、外国ではガードレール用の特殊レールによる場合があります。日本ではシーサスクロッシングで寸法的に防護が苦しい場合にはアングルを用いたF形ガードがガード用特殊レールを用いた例になっています。
    _ガードの原形はレールを曲げ加工して車輪の誘導部を構成したガードレールを間隔材とボルトで主レールに取り付けた構造の「A形ガード」で、レールブレスと座金で床板に締結し、床板はファングボルトで枕木に締結しています。この座金を上からみると鼻が突き出した天狗の顔のように見えましたので、天狗面の通称があります

    _ガードは車輪が異線進入を防止すると同時に、幅の狭いノーズレールやウイングレールの摩耗防止を図る目的もあります。可動クロッシングの分岐側に設置されるガードはその目的のものです。ノーズレールの摩耗防止を図るには、車輪がノーズレールに当たる量を規制することとなり、車輪の誘導量が増えることになります。ガードは車輪の背面を誘導して目的を果たすものですから、誘導量と速度が大きくなると背面横圧が大きくなり、したがってガードレールを保持する部材、締結する部材に働く力が増えて、ボルトの折損、バックゲージの拡大、主レールの通り狂い、ファングボルトの弛緩が生じて、ガードレールの機能が失われて来ます。このような状況を回避するために、種々の工夫がなされたガードが考案され、現在はA型ガードの考えを踏襲した「C形ガード」と、新幹線用に開発された強度の高いH形ガードが主体となっています。

    _軌道部材に使用されて常時車輪が当たる部分があるものを、一般にレールと呼んでいます。常時は車輪が当たりませんが、脱線が生じてから当たるレールには、安全レール、橋上ガード、脱線防止ガード、踏切ガード等があります。このような部材でレール用鋼(マンガン鋼を含む)を用いない部材としては、ポイントガードとF形ガードが一般的で、特殊なケースの本四連絡橋に用いられた橋上伸縮装置のレールも、レール鋼のブルームから鍛造加工して素材を作り切削加工しています。
    _「クロッシング」のウイングレールもガードの機能がありますから、この部分をガードレールの機能として用いるものにダイアモンドクロッシングのヘ形レールや、セルフガードがあります。またレールとガードを一体的にマンガンクロッシングで製作したもので、連絡船の緩衝桁上で連絡線と接合する部分のレールもあります。路面電車で使用されている溝付きレール(グルーブドレール)もこの種のレールでしょう。

    _ガードレールがその目的を果たす長さを防護区間といいます。異線進入を目的とするだけでしたら、防護区間は一般的に長くなりませんが、半径の小さいリード曲線に起因するクロッシングの摩耗防止も考えると、ガードレールの長さは一般的に長くなります。このため、基準線側のガードと分岐線側のガードは寸法が異なっています。戦前の列車速度が低い時代のA形ガードの27形ガードなどでは基準線、分岐線共2740mmに長さを統一したガードもありましたが、速度も通トンも多くなって50レールが用いられた分岐器から長さが変更になっています。

    問:トングレールとは何でしょうか

    答:_トングレールと言うのは、「ポイント」に使用され列車を他の線路に移すために転換されるレールのことで、「舌」が動くように動くことから名前がついたものと思われます。世界的に尖端ポイントが使用されているため、トングレールは尖端トングレールが一般的ですが、鈍端ポイントに使用されるのもトングレールです。また、伸縮継目(EJ)では尖端部のあるレールはトングレールで、受けレールと一対になっています。これも先が尖ってポイントのトングレールと似ているので名前がついたものと思われます。

    _トングレールは転換のために可動するので、締結装置によって固く締め付けることが出来ないため厳重な保守管理が行われています。特にトングレールが円滑に転換するためには、鋼製の床板の上に油を塗って滑らせており、また車輪を円滑に通すためには基本レールと接着させる必要があるため、基本レールとトングレール間を絶縁することは不可能な構造となっています。この構造によれば信号電流は基本レール側にもトングレール側にも流れることになり、信号回路による折損検知が出来ない仕組みになっています。

    _このように注意が必要なトングレールですので、特に高速で車両が通過するときに衝撃による過重な負担を避けるように、改良がなされてきています。トングレールは歴史的には基本レールと同種レールを切削加工して製作していましたが、トングレール足部の断面を削るために断面が小さくなりますが、これを避けるためにトングレール用の「特殊レール」が用いられるようになり、日本では50S、70S、80S、90Sレールが制定された経緯があります。このうち90Sレールは「溶接クロッシング」を実用化するために開発されたレールで、溶接のために両側に羽がある断面をしています。この羽はトングレールには必ずしも必要がないために、羽のない80Sレールが制定されています。70Sレールは50T、50N用分岐器に使用されるレールで、50Sレールは40N用分岐器に使用されるレールです。

    _60レール用分岐器に使用される「トングレール用特殊レール」は、現在80Sレールで、日本で一番強度の高いポイントを形成しています。トングレールの長さは後端の位置のフランジウエーを確保するための条件でトングレールの曲線半径(直線の場合は角度)で決まりますが、最大のものは高崎構内の北側にある上越新幹線と北陸新幹線の分岐点の38番分岐器です。しかし、トングレールはトラックや貨車の輸送能力でその長さが決まり、輸送出来ない場合には、現場で溶接することになります。38番分岐の場合には現場でガス圧接により溶接しています。現場溶接方法として、現在はガス圧接が主流で、エンクローズドアーク溶接、テルミット溶接がありますが、分岐器のように走行車輪から衝撃を受ける機会の多い部材ではガス圧接が好んで使用されます。

    _レールにボルト穴等をあけると、その周りに応力集中が起こり、強度の低下があります。特にレール底部は引っ張り応力が発生しますので、小さな亀裂が進展してレール折損にまで発展する恐れがあることから、設計においても、現場の検査においても慎重に検討されています。また、穴を明けるときに切れない錐を使ったりすると、高温となって組織がマルテンサイト化して折損の原因となることがあり、現場の作業においても慎重な作業が要求されています。過去にトングレールの折損が原因で事故となったケースはほとんどありませんが、昔のトングレールでは「転轍棒」のボルト穴をレール底部に明けていて、検査で微少な傷が見つかったケースが多々あり、現在のように連結版をトングレールの腹部にボルト穴を明けて取り付ける設計に変わって来ています。

    _また、昔のポイントでは基本レールの締結に床板をファングボルトで枕木に締結していました。このような締結方法はガードでも行われており、この部分の枕木交換を床板付枕木交換と呼んでいました。このような場合の枕木交換は枕木を軌道の横に抜くために破線する必要があり、保守をするときの困難作業の一つでした。現在は、床板を枕木に取り付ける方法は総て枕木の上部から犬釘やねじ釘で締結する方法に変わってきており、問題点を解消しています。分岐器の構造を改良して行く方向の一つとして、作業の困難性の解消の方向があります。

    _ところでトングレールしかない装置がありますが、これは多線軌道を振り替えるもので、標準軌間の軌道と狭軌間の軌道を共用する場合に3本のレールで走行できますが、狭軌間の軌道の中心を変えるために共用レールを左右入れ替える場合などに使用されます。これは一種の移線器です。昔貨車の台秤にも使いました。また、因みにクロッシングだけの軌道もあります。これは複線の一部で複線の建築限界がとれないトンネル等があった場合の設備で、ガントレットというようです。

    _トングレールと基本レールの高さに差があるポイントがあります。大正14年形のポイントの場合にはポイントの中央から後部でトングレールの方が基本レールよりも高く設計されていました。この場合背向で分岐器に入ってくる車両の回転性能に難があった場合には、ポイントの先端から先で車輪がレールから外れて脱線するケースがあります。特に高速で走る車両は蛇行動を防ぐために回転性能を殺していることがあるので、このようなポイントを通過する場合に難があります。ポイントガードなどを脱線防止用として使用するなどの対策が出来ます。

    _また車輪との相性で、偽フランジを持っているような車輪はポイントと相性が悪くなります。特に背向でポイントに入った場合には偽フランジ部分が基本レールとトングレールの間に挟まって割り出し現象を起こす心配があります。他に偽フランジのある車輪が相性の悪いのは、踏み切りの敷板、クロッシングのウイングレール等です。

    問:弾性ポイントとは何でしょうか

    答:_ポイントの項で説明したとおり、トングレールの後端、すなわち「ポイント後端継目」は、トングレールを転換させる場合に弾性により転換させるものと、継ぎ目の構造を滑接式にしたり、関節式にしたりする方法があります。弾性ポイントはトングレールの後端に弾性部と称する断面を小さくして撓み易くした部分を設けて、トングレールを弾性たわみにより転換する方式のポイントです。

    _この弾性部には撓ませるための力が必要ですから、転換させるための電気転轍器には余計な転換力が必要となり、転換力の大きいモーターポイントを必要とします。また、錘附転轍器(ポイントリバー)の場合には転換するための力が大きくなるので、現場の職員からは嫌がられるポイントです。もちろんこの重さでも楽に転換できるポイントリバーも開発されています。

    _弾性ポイントの設計は両トングレールが撓んで軌道の中央で釣り合いにある状態で設計されます。従って転轍棒から密着力がトングレールに伝わらないと、開口状態になって対向車両の割り込みを生じます。トングレールの開口はどこまで許されるかは、そこを通る車輪に良く聞いて見ないと分からない位難しいものですが、最悪の条件を色々と勘案して計算し検討して見るとおよそ5mm−6mm位のところに限度があるようです。信号の係員が密着力を厳重に管理しているのはこの理由によるのです。

    _弾性ポイントの使用は世界的に見ると、日本は遅れているように思われます。東南アジアの線路を見ると、分岐器の殆どは弾性ポイントを使っており、日本よりも簡単な構造の弾性ポイントがあふれています。弾性ポイントの方が気にしなければ構造も簡単にできますし、保守の点でも後端部の継ぎ目がない分だけ楽になるようです。

    _弾性ポイント用のトングレールを「特殊レール(Sレール)」で設計すると、後端部をリードレールに接続するために断面を合わせる手段が必要になります。一番簡単な方法は異形継目板ですが、Sレール用はありません。従って後端部は鍛造によったり、鍛造して断面を増やしておいて切削加工したりする必要があります。

    _弾性トングレールの弾性部は約1mの区間で底部の足を切り取った断面をしており、この部分の剛性を小さくして撓ませる構造になっています。従ってこの部分の加工を丁寧に仕上げて余分な応力集中などが起こらないようにすることが、安全なポイントの構成上必要になります。特に足の部分をもとの断面に戻す部分の取り付け半径などは経験によるもので、現在の100mmを小さくすると危ない領域に入ってくる危険性があり経験上で決まった断面ですが、これをいじって見ても大した経済効果はないので、このような寸法はそのままにしておく方が賢明です。分岐器の各部にはこのように経験上の設計値があるので、良く調べて理解することが必要です。

    問:鈍端ポイントとはなんでしょうか

    答: 通常の「トングレール」の先端は尖っていますので、これを尖端レールともいい、このトングレールを使う「ポイント」尖端ポイントともいいます。しかし、レールを直角に切った形のトングレールを作り、基本レールも直角に切って突き合わせとして転換することは可能で、この形式のポイントを鈍端ポイントと呼んでいます。
    _鈍端ポイントは、機械加工する部分が少ないために構造によっては現場でトングレールを製作できる利点があります。しかし、工作機械技術が発展した現在は尖端トングレールの利点が大きいためにほとんど使用されることはありません。

    _現在鈍端ポイントの利点として上げられるのは、耐雪性能であります。尖端ポイントは、尖端トングレールを基本レールに接着させることにより尖端トングレールに働く横圧を受ける構造になっていることと、尖端トングレール先端の異線進入を防ぐため、転換完了の信号現時のためにポイント先端の厳しい密着条件を満足させることになっています。従って基本レールと尖端トングレールの間に雪が入り込んで接着を妨げ、密着条件を満足させない場合には、転換完了の信号現示条件が満足されませんから信号機に進行現示が表示されないこととなり、転換不能の状態となります。特に気温が降下してトングレールおよび基本レールの温度が下がりますと、基本レールと尖端トングレールの間にはさまった雪塊が転換力により押し潰されることになります。このような状態でも雪の少ないうちは転換動作を繰り返すと転換出来ることがあります。しかし、アイススケートの滑る原理にはスケートにより圧縮された氷の表面が圧力により溶けて一時的に液化し、そのために氷とスケートとの間の摩擦力が減って滑りやすくなると言われていますが、アイススケートの場合も一時的に溶けた氷は圧力がへると再び氷化します。基本レールと尖端トングレールの間に挟まった雪塊も、転換力により押しつぶされると一部が融解してとなり、溶けた水の部分はトングレールの動作が完了すると再び氷化して基本レールと尖端トングレールの間に小さな氷塊を造ります。この氷塊は柔らかな雪と違って硬いためにに何度も転換動作を行っても基本レールとトングレールの間に凍りついていて転換動作が完了しなくなります。

    _また、降雪時には走行する車両に雪がへばりついて雪塊となり、継ぎ目の衝撃などで落下することがあります。このような雪塊は硬化していて、基本レールと尖端トングレールの間に落下すると転換が難しくなります。また、降雪量が増えると、車両前端にあるスノープラウが雪を押して走るようになり、このような状態で走行して来ますと、押されてきた雪が基本レールと尖端トングレールの間に入り込んで転換を出来なくする恐れがあります。特に一番列車等の時には線路上に雪が溜って相当な量になりますから基本レールと尖端トングレールの間に相当な量の雪が入り込み、トングレールの転換を困難にします。

    _基本レールと尖端トングレールの間に入り込んで転換を難しくするのは雪だけでなく、石炭の粉、石灰の粉、砂等の場合があります。このようなバラ積みのホッパーがある作業場の鉄道のポイントでは転換不能状態が起こることが多々あります。このような場合に鈍端ポイントを使用すると、基本レールとトングレールが重なることがありませんから、構造的に基本レールとトングレールの間に異物が介在する状態がなくなり転換を支障しません。外国の使用例などで鈍端ポイントの耐雪、耐異物性能を利用した例があり、日本においても耐雪性能を求めて試験が行われた例があります。

    _鈍端ポイントの耐雪性能を発揮させるためには、鈍端ポイントの持つ問題点を解決する必要があります。鈍端ポイントの持つ問題点は、

    ______(1)トングレールの横圧受け

    ______(2)温度変化によるトングレール先端の遊間管理

    であります。特に遊間については戦前の鈍端可動クロッシングの場合に実施されたように夏用レールと冬用レールを準備して、秋口と春先に定期的に交換するという経験があります。また、尖端トングレールのようにトングレールの横圧を基本レールで受けるわけにはいきませんから、転換装置や、鎖錠装置で横圧をとることとなり、装置が巨大化してしまいます。また分岐部材で横圧を受ける構造とすると全体の構造が複雑になる問題があります。このような問題点を持ったまま鈍端ポイントを実用化することについて、現在まで足踏みをしている状態であって、試験は行われているものの鈍端ポイントの持つ耐雪性能を実用的に利用したというケースは日本にはありません。

    問:振分分岐器とは何でしょうか

    答:_振分分岐器は、分岐角を基準側、分岐側に決まった比により振り分けて設計された分岐器で、側線のように用地の形状により線路の方向が複雑に入り込んでいる場合に配線を設計する場合に利用されます。分岐器の構造としては「片開き・両開き分岐器」と同じで、設計上は両開き分岐器の部品を使用して、決まった比に応じた角度で分岐器を捻った構造に設計すれば良いので、さほど難解な問題ではありません。

    _現在用いられている振分率は9:1、4:1(8:2)、3:1(7.5:2.5)、7:3、2:1(6.666:3.333)、3:2(6:4)の6種類が標準設計となっています。もちろん「両開き分岐器」を捻るだけですから、どのような比率にでも設計することは可能です。また、現地で用地と配線の状態が現場の状況によっては一致しなくなり、苦しまぎれに設計された分岐器を少し捩じって敷設してあることもないとはいえず、そのような分岐器でも十分使用に耐えており、実際の所今まで問題にはなっていません。

    _「シーサースクロッシング」では、4隅の分岐器をどのようなものを持ってきても、接続する部材の寸法によって必要とするガードが取りつくかどうかが問題になるだけで、設計が可能です。必要とするガードが中央のダイアモンドクロッシングに使用されるK字クロッシングサイドクロッシングの位置関係により特殊な設計となる場合、あるいはガードを取り付ける寸法がないためにクロッシングをガードの不要な可動クロッシングとする必要がある場合等が出てきて、設計条件を検討する必要はあります。4隅の分岐器が普通の片開き分岐器でない場合を特殊シーサースクロッシングといい、製作用、保守用の図面を別に作成しています。4隅の分岐器に振分分岐器が敷設されるとするとその組み合わせは非常に多くなり、従って特殊シーサースクロッシングの数は非常に多くなりますが、実務上はそれほど問題はなく、また現場においても4組みの分岐器と1組のダイアモンドクロッシングに過ぎませんので、問題はないものと思われます。ただし、ダイアモンドクロッシングを構成するK字クロッシングについては、番数が大きいと無誘導長が限界を越して脱線する場合がおこりますが、この場合の脱線は経験によると1週間に何回も起きるほどの頻度となり危険ですので、無誘導長に対する配慮は慎重にして設計する必要があります。

    問:ポイント後端はどうなっているのでしょうか

    _弾性ポイントの項で述べた通り、ポイント後端継ぎ目は車両が分岐器を通過する際の衝撃により、継目弛緩、ボルト折損、床板損傷などを生じるため、鉄道200年の歴史と経験に基づく改良・改善を経て設計上の配慮がなされ、厳重な保守管理により安全が確保されています。特に転換することにより機能が果たされる構造のトングレールは、締結が不完全とならざるを得ない構造となっているため、厳重な保守管理が実施されています。

    _ポイント後端の安全性を高めるためには、「弾性ポイント」とすることより継ぎ目を通過する列車により発生する衝撃を軽減することが最も望ましいと考えられますが、全国で7万組を越える分岐器全部が弾性ポイント化されるまでには相当な月日が必要となりますので、当分の間現在の状態が続くものと思われます。
    _ポイント後端の継目構造には、滑節式と関節式とあり、関節式にはピボット構造のものと、継ぎ目板構造のものがありますが、今までの経験ではNレール用分岐器に採用されてきた継目板構造の関節式継ぎ目が最も問題の少ない構造となっています。当初のNレール用の分岐器では、ポイントのヒール(踵)部継ぎ目はトングレール側はボルト一本の構造となっており、ヒール部の継ぎ目板折損に対してトングレールを保持するには不十分であると思われたため、ISOねじの採用時による改良により、現在の3本ボルトとなった経緯があります。また、当時からこの部分のボルトの弛緩が問題となり、ヒール部の継ぎ目板が外れないための座金が取り付けられています。特にこの座金は継目板の寸法による組立誤差を取るために調節式となっており、細かな配慮がなされています。

    _ポイント後端継ぎ目は枕木2丁にまたがった大床板の上に固定されており、大床板と基本レール、リードレールとの締結は調節式の座金を含む座金により締結されています。この座金を床板に締結させる方式は、床板の下から上向きにボルトを差し込む方法で、30、37、50レール用のレールブレス等でファングボルト(爪付きボルト)として用いられたものの延長線ですが、大床板が枕木と重なる位置から上向きに立ち上がったボルトは折損したときの交換は枕木を落とし込むなど多人数が必要な保守作業を強いることとなり、保守人員を削減する方向と共に、T形ボルトを使用した大床板の上から折損したボルトを容易に交換出来る現在の方式に改善されて来ています。

    問:ポイント先端はどうなっているのでしょうか

    答:_ポイントのトングレールの転換力は、ポイント先端部に取り付けられている転轍棒を介してモーターポイントなど転轍器転換機により与えられます。また、モーターポイントなどに付属している鎖錠器の位置検知用として「トングレール」先端にフロントロッドが取り付けられています。フロントロッドはトングレール先端の位置を鎖錠器に伝達するために剛性の高い肘金具とロッドで構成させており、鎖錠器の位置と密着状態を調整するためのねじ部が付随しています。モーターポイントなど電動機を内蔵し、信号回路と連動している装置、および鎖錠器との位置関係の調整を必要とする部分については、信号設備を所管する部署の責任範囲であり、車両走行に起因する乗心地、脱線等に関する責任は軌道設備を所管する部署の責任範囲としているのが普通の組織です。

    _トングレール先端にあるフロントロッドは鎖錠装置と直接接続されていますから、この部分で損傷が起きた場合には信号装置故障となり、列車や車両の運転が支障する恐れがありますから、トングレールの後端継目が弛緩したりポイントの枕木が浮いていたりしないための補修作業が行われ、列車・車両が通過する時にトングレールがからフロントロッドに大きな力を与えないように維持されています。またフロントロッドや肘金具そのものには、列車荷重を受けるだけの機能も強度もありませんから、信号装置に過大な負荷を与えないよう、ポイントの状態は厳重に保守管理されています。欧米の鉄道のポイント先端の構造はトングレールについては似通った方式を採用しているので余り変わったものではありませんが、鎖錠器やモーターポイントの構造はそれぞれ違いがあります。

    _転轍棒はモーターポイントなど転換機からの転換力を伝える部材ですが、転轍棒とトングレールを取り付ける部分は転換機からの転換力をスムーズにトングレールに伝えると共に、この部分の損傷によりトングレールが制御出来ない状態になると、脱線等の事故を惹起する恐れがあり、特に転轍棒ボルトの弛緩、折損が起こらない状態を維持するための保守管理が必要になり、転轍棒ボルトの弛緩による脱線事故の発生以来、転轍棒ボルトの抜け落ちを防止する脱落防止金具を取り付けることとなりましたが、この取り付け方向を反対にするとレール絶縁の短絡事故を起こすことがあるなど、トングレール前端付近は細かい神経と慎重な保守管理により安全が維持されています。
    _現在の形式の「Nレール用分岐器」 はトングレールに連結版を取り付け、この連結版に転轍棒を取り付ける構造となっています。これは旧式のNレール用の分岐器では、トングレールの底部にボルト穴を明けて転轍棒を取り付けていましたが、レール穴の部分に亀裂を生じる恐れがあったため、設計が変えられたものです。トングレールは性質上レール折損を生じると危険なので、長年の経験に基づいて改善・改良のため設計上の細かい配慮がなされています。

    問:ノーズ可動クロッシングとは何でしょうか

    答:_線路が線路を平面で交差する部分を「クロッシング」といっていますが、レールとレールが緩い角度で交差すると、交差部分のレールが細くなります。ここを通る車輪の踏面は幅を持っていますから、車輪のフランジが通る部分の欠線部が空いていても乗り移って通過することができます。乗り移りのためにはレールを軌間の外側に曲げて車輪の幅を広く利用するほうが乗り移り衝撃が少なくなり、曲げているレールを鳥の羽に見立ててウイングレール(翼軌条)と呼んでいます。このレールに対して細くなっているレールをノーズレール(鼻端軌条)といいます。

    _クロッシングはフランジがレール部分を交差して通り抜けますから、フランジが通る部分に欠線部があり、ここを通る際の衝撃を緩和するためには、この部分のレールを欠線部が無くなるように移動させる方法があります。この方法のクロッシングを可動クロッシングと呼んでおり、
    ____ノーズ可動クロッシング
    ____ウイング可動クロッシング
    があります。ノーズ可動クロッシングにはノーズ先端が尖っている形式と、鈍端レールとなっている形式(鈍端可動クロッシング)があります。
    _現在日本で多く使用されている形式は尖端ノーズ可動クロッシングで、新幹線用のクロッシングはマンガン鋳鋼で鋳造されているものです。マンガン鋳鋼は車輪で叩かれると却って硬くなる性質があり、また亀裂を生じても進展が遅いなどレールとしては理想的な性質を持っていますが、鋳造による欠陥があって製作時の検査を十分して使用する必要があり、鉄道の線路ではマンガンクロッシングなど特殊な部材に使用しています。

    _この形式のノーズ可動クロッシングは日本で開発されたもので、新幹線に実用化された当初は欧米の鉄道は可動クロッシングの必要性について理解していませんでしたが、その後欧州の研究所で研究された結果、固定クロッシングの個所を高速で通過する際の「ガードレール」に発生する背面横圧に対処するための実用的な方法として見直され、現在の欧州の高速線路の分岐器にも一般的に使用されるようになって来ました。

    _鈍端形のノーズ可動クロッシングも日本の開発によるもので、戦前の日本の鉄道の上級線区に多く使用されていました。帽子形レールを使用したトングレールと併用され、「帽マン分岐器」として多用されました。しかしノーズレール先端の遊間の保守が難しく、戦後占領軍の列車が脱線事故を起こしたために、固定式の「マンガンクロッシング」に取り替えられました。

    問:A形ガードとは何でしょうか

    答:_A形ガードというのは、アルファベット順に開発されたガードのうち最も最初に開発された形状の「ガード」のことをいいます。分岐器のガードというのはガードレールと主レールとの間のフランジウエーの間隔を保つための間隔材またはガードレール支材、およびガードレールと主レールを枕木に締結するための締結装置等の総体を指しています。
    _A形ガードの特徴は、主レールと同種のレールで折り曲げ加工されたガードレールを間隔材を用いて主レールにボルト締結されている。また床板と枕木の締結はファングボルト(爪付きボルト)によっています。ファングボルトは枕木底面から上に立ちあげるボルトで、ボルトの頭部にある爪が枕木底面に食い込むことにより回り止めが図られるもので、上面からナットで締め付けます。このボルトでガードレールを保持するレールブレスを止める構造となっています。またkのレールブレスを上面から見ると天狗の面のように見えたことから、天狗面との俗称がありました。

    _A形ガードは大正14年型分岐器に用いられたガードで、ガードの原形ともいえるものです。ガードにはクロッシングの軌間線欠線部での車輪の異線進入を防止するのを主な目的として、特に分岐側のクロッシングの摩耗防止も兼ねていますが、A形ガードは異線防止のみを考えたガードで、寸法も基準側と分岐側が等しい2740mmの長さであったことから、27形ガードの俗称もありました。
    _このガードレールは同種レールを曲げて、底部を切削加工して製作するもので比較的容易に製作できるものです。しかし、車輪の誘導勾配が比較的急なことにより、車輪を誘導する時に発生する背面横圧が大きいために、主レールを含めてガード部での軌間の縮小が目立ち、ゲージストラットを用いて軌間の縮小防止が図られました。これらの問題点はその後開発されたガードにおいて改良・改善されNレール用分岐器では「C形ガード」が制定されました。

    問:大正14年形分岐器とは何でしょうか

    答:_明治時代の開業時代には輸入されていた分岐器は、その後国産化が可能となりましたが、大正8年から14年にかけて日本独自の分岐器の設計が行われ、大正14年に制定されたことから、大正14年形分岐器の俗称がありました。そして定規分岐器と呼ばれた30および37レール用の分岐器と、準定規分岐器と呼ばれた50PSレール用の分岐器とがありました。
    _これらの分岐器は、「鉄道大臣官房研究所」の軌道係で設計され、その後国鉄時代を経て、現在その機能は鉄道総合技術研究所に受け継がれています。この大正14年形分岐器は戦前・戦中を通じて標準形分岐器と呼ばれていて、戦後Nレール用分岐器が制定されるまでの間、大量に敷設されて日本の代表的な分岐器となっていました。従って、現在でも下級線の側線や地方の民鉄線を丹念に見ると見つかることと思われます。しかし、この時代の最強の分岐器であった帽子形トングレール使用分岐器と鈍端クロッシングは日本に敷設されている場所は無くなったものと思われます。

    _大正14年形分岐器で改良された旧定規形分岐器の問題点は、「ポイント後端部」のピボット構造を滑節形の継目構造に変えたこと、クロッシングの大床板を大きくしてウイングレールの曲げを大きくしたことで、その後の分岐器の構造改良もこの問題点の延長線になっています。大正14年形分岐器は比較的経済的な構造の分岐器であり、この設計思想はその後の「下級線用分岐器」「側線用分岐器」の設計に引き継がれています。しかし「上級線区」では鉄道の輸送量や速度が高くなり保守作業員の人件費が高騰してきたことから、分岐器の構造を強化して損耗を押さえる方がより経済的と考えられるようになり、新幹線用に強度の高い分岐器が完成していたことから、現在の分岐器に変わってきたものです。

    問:帽マン分岐器とは何でしょうか

    答:_大正年代に国産化され日本独自の設計された大正14年形分岐器は経済的な設計であったため材料の損耗が比較的速く、その後鉄道の輸送量が増大し速度が高くなって来ると、その問題点が浮き彫りになってきました。特にポイントに直線トングレールを使用し、大床板付きの組み立てクロッシングを使用していたことから、この部分の損耗が速く、この改善策が求められていました。
    _このポイント部における改善は欧州で使用されていた[分岐器用特殊レール]の使用で、当時のレール製造過程でインゴットから圧延される中途のレールを用いてトングレールを切削加工したものが、そのレールの形が山高帽子の形に似ていたことから、帽子形レールと呼ばれ、このレールで製造したトングレールを帽子形トングレールと呼び、帽子形トングレールを使用したポイントを帽子形ポイントと呼びました。
    _またクロッシングについては高マンガンのハッドフィールド鋼を用いた鋳造のクロッシングの研究はかなり以前からなされていましたが、日本ではマンガン鋼材は戦時には民生用の使用は難しい上に比較的経済的な鈍端可動クロッシングが開発され欧米の評判も高かったことから、鈍端可動クロッシングが普及しました。しかし鈍端可動クロッシングは夏冬の遊間管理が難しく、これが原因で進駐軍の列車が脱線したことから総司令部の指導もあって米国の「マンガンクロッシングの導入が図られ、帽子形ポイントとマンガンクロッシングを使用した分岐器を帽マン分岐器と呼び、戦後の最強分岐器でありました。

    問:溶接クロッシングとは何でしょうか

    答:_日本のクロッシングは、戦後マンガンクロッシングが性能的に最強のクロッシングでしたが、ロングレールの普及が図られ、分岐器を高速で走行するための研究が進められると、クロッシングの前後端を前後のレールと溶接する必要性が生じました。
    _しかし、マンガンクロッシングの原材料である高マンガン鋼の鋳造品は鋼の組織がオーステナイト組織であって、炭素の含有率が0.7−0.9%のパーライト組織をもつ普通レールとの現場溶接は非常に困難であり、そのため現場溶接が可能な低炭素合金鋼を用いて溶接接合で製造したクロッシングの製造の研究が開始されました。

    _世界的に見て溶接クロッシングはドイツで盛んであり、当時もドイツから溶接クロッシングを輸入して試用して見た結果、損傷が発生して日本ではドイツ仕様のクロッシングは使用に耐えないことが分かり、国産化の研究が行なわれた結果クロッシング用の特殊形状をした90Sレールを開発して製造が行なわれました。
    _しかし、低炭素合金鋼のレールは溶接性は良いもののクロッシングを構成した場合には、車輪のノーズ部での乗り移り衝撃を受けて乗り移り部の損傷が発生することが分かり、その後鍛造クロッシングが研究されました。しかし鍛造クロッシングは鍛造機械が大規模となって製造コストが嵩み、高速クロッシング程度の需要では経済的にならないことが明確になり、また鍛造製品も車輪乗り移り部の衝撃に耐えられないことも判明したために、鍛造クロッシングに代わって圧接クロッシングの研究が実施されました。
    _圧接クロッシングというのは、クロッシングのノーズ部をV字形のVピースとしてガス圧接により加工し、周囲のウイングレールと接着材により接着してクロッシングを構成する製造法によるもので、Vピース、ウイングレール共にスラッククエンチにより微細パーライト組織の熱処理が施されて硬度を高め、耐久性の向上をねらったものです。この圧接クロッシングはその後民鉄線の通勤線区で年間4000万トン以上の線区に試験敷設され2億トン以上の耐久性があることが分かり、現在の日本の溶接可能な材料によるクロッシングとしては最強の性能のものとなっています。


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    アップデート:1998年7月03日
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